個人再生後に支払う額はどう決まる?最低弁済基準額について
個人再生手続きによって、借金を大幅に減らすことができます。
しかし、債務が全額免除されるわけではないので、個人再生後には減額後の借金の支払いをしていく必要があります。
では、個人再生が認められた後には、一体どれくらいの額の支払いをしなければならないのでしょうか?
このコラムの目次
1.個人再生とは
個人再生は債務整理の一種で、冒頭で述べた通り、借金を大幅に減額してもらう手続きです。
しかし、自己破産のように借金を全て免除してもらえる制度ではないので、減額後の残債を返済する義務があります。
また、どこまでも金額を減らせる訳ではなく、最低でも返さなければいけない金額は決まっています。
これを「最低弁済額」といい、民事再生法で詳細に決められています。
そのため、民事再生手続のためには、継続的で安定的した収入があることが重要です。
ところで、個人再生には2種類あり、1つは「小規模個人再生」もう1つは「給与所得者等再生」です。
一般的には、「小規模個人再生」が使われることが多く、「給与所得者再生」はあまり使われません。なお、給与収入があるからといって、「給与所得者再生」しか使えないというわけではないので、ご注意ください。
どちらの手続きを選択するかによって、最低弁済額にも違いが出てきます。
2.小規模個人再生の最低弁済額
まず、小規模個人再生の場合について解説します。
小規模個人再生の場合は、①債務額から算出される最低返済額と、②財産から算出される最低返済額を比べて、より多い金額が、実際の最低返済額として採用されます。
(1) 債務額から算出される最低返済額
個人再生の最低弁済額は、借金総額によって基準額が決められています。
借金総額(負債額)が大きくなるほど最低弁済額は上がります。
借金総額に対する最低弁済額は下記の通りです。
- 借金総額…最低弁済額
- 0円~100万円…全額
- 100万円~500万円以下…100万円
- 500万円~1500万円以下…借金総額の5分の1
- 1500万円~3000万円以下…300万円
- 3000万円~5000万円以下…借金総額の10分の1
なお、上記借金には、基本的には住宅ローンは含めません
さて、例えば、400万円の借金がある人の場合、最低弁済額が100万円となります。
また、500万円~1,500万円になると、最低弁済基準額は借金総額の5分の1となるので、例えば1,000万円の借金を抱えている場合、最低弁済額は200万円となります。
なお、借金総額が100万円以下の最低弁済基準額は全額となっているので、100万円までの借金では減額はありません。よって、
100万円以下の借金で債務整理をしたい場合は、通常、個人再生は用いません。
このように債務額から算出される最低返済額はこのように算出するわけですが、先ほど記載したように、債務額から算出される最低返済額よりも、財産から算出される最低返済額の方が高ければ、より高い方が、実際の最低返済額として採用されます。
(2) 財産から算出される最低返済額
財産から算出される最低返済額の計算というのは、単純に、持っている財産を全部お金に変えたら、どの程度の価値があるか、ということです。
たとえば、貯金が100万円あって、30万円の解約返戻金のある保険にも入っている人は、合計130万円を持っているので、これが最低返済額ということになります(なお、よほど高価でなければ、家財道具や家電などはこの計算に入れません)。
あとは、これを、債務額から算出される最低返済額と比べます。
400万円の借金がある人の、債務額から算出される最低弁済額は100万円なので、この人が、130万円の財産を持っているとすると、これらを比べて、130万円を最低返済額として採用します。
3.給与所得者等再生の最低弁済額
ここまでは、「小規模個人再生」の話です。「給与所得者等再生」では、最低弁済額の算出方法が変わります。
具体的には、給与取得者等再生では、①債務額から算出される最低返済額と、②財産から算出される最低返済額を比べるだけでなく、③収入(可処分所得)から算出される算定返済額も比べて、そのうちもっとも高いものを基準とし採用します。
③は、①や②よりも高額になることが多いので、結局、小規模個人再生よりも最低返済額は高額になる傾向があります。
それだけ見ると、給与所得者等再生は損ではないか?と思いがちですが、給与所得者等再生は、手続にあたって債権者の同意が必要ないという特色があり、債権者の反対がありそうな事案などで活用されます。
4.借金の減額に影響を与える禁止行為
ところで、個人再生では「債権者平等の原則」があるので、特定の債権者だけ優遇して返済をする「偏波弁済」は禁じられています。弁護士に依頼して、消費者金融などへの返済をやめたのに、友人にだけお金を返すことなどがこれに当たります。
偏波弁済が発覚した場合、その分、最低弁済額を増やすことになる場合が多く、大きな負担になってしまいます。
また、そのような事情があると、そもそも個人再生が認可されない恐れもあるので、十分注意してください。
5.個人再生ができるかどうかの検討は弁護士にご相談を
以上のとおり、2種類ある個人再生のうちどちらを選択すべきかとか、その場合の最低返済額は幾らになるのかとか、様々な難しい問題があります。
さらに、そもそも、個人再生を選択すべきか(破産や個人再生を選択すべきでないか)を考えなければならないケースもあります。
このように、様々な難しい問題がありますので、手続を進めていくにあたっては、専門家のサポートが必要不可欠です。
泉総合法律事務所では個人再生手続きの経験が豊富にございますので、お困りのことがあればぜひお気軽にご相談下さい。現在の状況を丁寧にヒアリングし、お一人おひとりに対してベストの解決策を提案させて頂きます。
借金問題は早く対処するほど、有利な展開にもっていくことができます。そのまま放置をすると解決の選択肢も狭まるので、一刻も早く対処することが肝心です。
越谷市、春日部市、埼玉東部地域、東武スカイツリーライン沿線に在住の方、勤務地がある方は泉総合法律事務所越谷支店にお気軽にご相談下さい。
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