過払い金と消滅時効|返還請求はいつまで可能なのか?
過払い金返還請求とは、法律上の根拠なく支払いすぎていた利息を、貸金業者から取り返すものです。
以前からテレビのCMなどでもお馴染となっていますが、もうそろそろ請求できなくなって来ると言われています。
原因は、民法上の請求権につき裁判所を使って要求できなくなる制度である、消滅時効にあります。
ここでは、過払い金と消滅時効について説明します。
このコラムの目次
1.グレーゾーン金利
借金をしたとき、その返済に際しては、借りたお金をそのまま返すのではなく、一定の割合で利息を上乗せしなければならないのが、社会取引上の基本です。貸金業者からの借金も例外ではありません。
ところが、貸金業者から借金をした際の利息については、法律による規制があいまいなまま、長年放置されてしまっていました。
その結果、支払い過ぎた利息、つまり、過払い金が発生したのです。
利息があまりに大き過ぎると、借主がいつまでも借金を返済しきれないまま、貸主にお金を絞られてしまいます。
そこで、法律上利息には上限が設定されていました。
まず、利息制限法では、
- 借金額が10万円未満…年率20%
- 借金額が10万円以上100万円未満…年率18%
- 借金額が100万円以上…年率15%
とされていました。
一方、出資法では、29.2%が上限となっていたのです。この利息制限法と出資法での上限金利の間の金利を、グレーゾーン金利と言います。
グレーゾーン金利は、利息制限法上は違法ですが、出資法上は合法のように読める法律の定め方がされていました。
さらに、貸金業者に関する法律である貸金業法では、場合によっては、利息制限法以上の利率による利息を貸金業者が受け取ってしまっても、借主に返還しなくてよいとの規定まであったのです。
結果として、多数の貸金業者が、グレーゾーンに基づいて借主から利息を取り立てていました。
しかし、2006年、最高裁判所は、グレーゾーンの金利に基づく利息の設定を否定し、グレーゾーン金利により受け取った利息は、原則として借主に返還しなければならないとの判断をするに至りました。
この結果、グレーゾーン金利に基づいて支払われていた部分の利息は、法律上の根拠なく支払われ過ぎていた過払い金であるとして、貸金業者に返還請求ができるようになったのです。
2.貸金業者によるグレーゾーン金利の解消
上記最高裁判所の判断、さらには、翌2007年の貸金業法の改正もあって、2007年には、ほとんどの貸金業者が、金利を利息制限法の範囲内に引き下げました。
2010年の貸金業法をはじめとする法律の改正が完了し、グレーゾーン金利に関する問題は完全に消滅しました。
現在では、利息制限法の上限を超えると行政処分がされることになっていますので、闇金でもない限り、一般の貸金業者が利息を受け取り過ぎていることは無くなっています。
逆に言えば、遅くとも法改正が完了した2010年、ほとんどの場合は貸金業者の自主規制がピークを迎えた2007年までに返済した借金の利息についてしか、過払い金は認められないということです。
これは、一定時間が経過することにより、自らが持っているはずの権利を裁判所を介して請求できなくなる、消滅時効制度との関係で、深刻な問題をはらむことになります。
3.過払い金返還請求権の消滅時効
(1) 消滅時効とは
時効という言葉を一般の方が耳にするのは、どちらかというと、未解決殺人事件に関する報道の事が多いかもしれません。
しかし、お金の請求など、いわゆる民法の世界でも、時効、具体的には、消滅時効という制度があります。
消滅時効とは、権利を行使できるようになってから一定の時間が経過すると、裁判所に権利を主張できなくなるという制度です。
時間が過ぎると証拠が無くなり、正確な判断が困難になりますし、また、権利を行使できるのにしなかった以上、そのような不利益を受けても仕方がないと言えるからです。
(2) 過払い金返還請求権の消滅時効は10年
消滅時効は、権利の性質により期間が大きく異なります。
過払い金返還請求権は、民法上、不当利得返還請求権という権利の一つとされています。
グレーゾーン金利という不当な金利により受け取った利息を返還するよう要求する権利だからです。
不当利得返還請求権の消滅時効は10年となっていますから、過払い金返還請求権の消滅時効は、10年なのです。
4.過払い金返還請求権の消滅時効の起算点
(1) 起算点とは
単に消滅時効の期間を決めただけでは、現在過払い金返還請求権が消滅時効にかかってしまっているかどうかは分かりません。いつから数えるのか、消滅時効の起算点も定めなければいけません。
過払い金返還請求権の場合、過払い金は、グレーゾーン金利分の利息を含む返済を分割でしたとき、1回ごとに発生しています。
もし、過払い金が発生した時から10年で、過払い金返還請求権は消滅時効にかかってしまうとすると、もはやほとんどの場合、請求は出来ないことになってしまいます。
(2) 消滅時効の起算点は最後に取引をした時点
最高裁判所は、過払い金返還請求権の消滅時効の起算点は、原則として貸金業者と借主が、最後に取引をした時点としました。
なぜなら、一般的な消費者金融では、一定の借金の上限枠の範囲で、借りたり返したりを何度も繰り返すことがほとんどだからです。
つまり、個別の返済ではなく、ひとつの契約から生じた一連の取引全体をみるべきとされたというわけです。
5.まだ間に合う。でも急いで!
貸金業者がグレーゾーン金利を無くしたのは2007年頃です。
ということは、「もうとっくにそれから10年たっているのだから、今更過払い金返還請求をしてもどうせ消滅時効にかかってしまっている」と諦めている方も多いかも知れません。
しかし、取引の内容によっては、現在でも全く問題なく過払い金返還請求をすることは可能です。
2007年以前に借りた借金を、2007年以降も返済し続けていれば、その返済が終わったときから、消滅時効が起算されるからです。
もっとも、ならば焦らないでもいいという訳ではありません。
過払い金返還請求の荒波の中、多数の貸金業者が倒産の憂き目にあっています。倒産した貸金業者から取り戻せる過払い金は、ほんのわずか、下手をすれば全くの0円です。
さらに、取引の途中でいったん完済し、一定期間、取引をしなかったものの、また借金をしたというとき、その空白期間の前後で取引はつながっていないと判断されてしまうと、消滅時効の起算点が最初の完済時からになってしまうという大問題もあります。
「善は急げ」と言います。過払い金があるのではないかというお心当たりのある方は、直ぐに弁護士にご相談下さい。
6.過払い金の消滅時効は弁護士に相談を
過払い金返還請求権は、消滅時効によりもうピークを過ぎたという言説が、まことしやかにささやかれることが多くなって来ています。
確かにグレーゾーン金利の解消から直ぐに10年以上経っていることは事実です。しかし、だからと言って、全ての過払い金返還請求権が消滅時効にかかってしまっているという訳では、決してありません。
もしまだ過払い金返還請求をしていないという方は、お早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談下さい。
過払い金返還請求権の消滅時効は、意外に専門的な問題が多く、未だに実務上決着がついていないところもあります。弁護士の助力は不可欠です。
ご相談は何度でも無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせいただけたらと思います。
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