交通事故でむち打ち|後遺障害12級の認定と慰謝料
交通事故で怪我を負った場合、相手からは治療費や慰謝料、休業損害などを受け取ることができます。
また、交通事故の怪我の症状が改善せず「後遺障害」として残ってしまった場合は、先述の治療費などとは別に、「後遺障害慰謝料」「後遺障害逸失利益」などを受け取ることになります。
今回は、交通事故でよくみられる「むち打ち」で、後遺障害12級になってしまった場合に役立つ情報を解説します。
このコラムの目次
1.「むち打ち」とは
よく「追突事故でむち打ちになった」などと表現されますが、「むち打ち」は傷病の正式名称ではありません。
「むち打ち」とは、交通事故等の外部からの衝撃により首がむちのようにしなることにより負った頸部(首周辺)の損傷全般を意味しており、医師の診断書では「頸椎捻挫」、「頸部挫傷」、「外傷性頸部症候群」などと記載されるのが通常です。
(1) むち打ちの症状
損傷の場所や程度によって症状は様々ですが、むち打ちの基本的な症状として、下記のような症状が多く認められます。
- 痛み
- 頭痛
- 吐き気
- しびれ
また、特にむち打ちは事故直後ではなく、事故から数時間~数日経ってから痛みなどの症状が発現してくることが多いとされています。
(2) むち打ちの治療
頸椎捻挫の場合は基本的に「保存的治療」が行われます。
保存的治療とは
- 適切な装具(頸椎カラー)の使用
- 鎮痛剤の服用
- 局所安静を保つ(患部をできるだけ動かさないようにする)
などを適宜施して様子を見ていく、という治療です。
なお、「局所安静を保つ」という点については、可能な範囲で適度に動かした方が治癒も早い、という場合もあるので、医師と相談しましょう。
2.むち打ちの賠償金
交通事故で受傷し、治療を行った場合、以下の賠償金を受け取ることができます。
(1) むち打ちになった場合に受け取れる賠償金
治療費
入院、通院問わず治療にかかった費用のことです。診断書作成料や、医師の指示に従って通った整骨院の費用などもここに含まれます。
慰謝料
交通事故に遭ったことによって感じた精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。
入通院の期間や頻度などによって、損害賠償金が決められています。
休業損害
交通事故が原因で収入が減ったり無くなったりした場合、それを補填するための賠償金のことです。
給与収入を得ている人の場合、勤務先に「休業損害証明書」を作成してもらい、それをもとに請求することになります。
(2) むち打ちが後遺障害として残った場合に受け取れる賠償金
交通事故で負ったむち打ちの症状が後遺障害として残った場合は、「(1) むち打ちになった場合に受け取れる賠償金」に加え、以下の賠償も受け取ることになります。
後遺障害慰謝料
後遺障害が残ってしまったことが原因で感じた精神的苦痛に対する損害賠償のことです。
後遺障害逸失利益
後遺障害が残ってしまうと、その影響で事故前のように継続して収入を得られなくなったり、本来入ってくるはずの収入が減ってしまったりします。
その分を補填するためのお金です。
後遺障害慰謝料および後遺障害逸失利益の算出のためには、後遺障害の程度に応じて「後遺障害等級」の認定を受ける必要があります。
3.後遺障害等級とは
後遺障害等級とは、被害者が負った後遺障害が、「後遺障害等級表(国土交通省が作成)」のどの等級に該当するかを示す等級のことです。
段階は、第1級(重度)から第14級(軽度)までの段階があります。
後遺障害等級の項目は、目や耳、口(咀嚼や言語)の能力・手足や指の欠損や能力・神経系統の機能・内蔵の機能・精神障害など、項目は非常に多岐にわたっています。
後遺障害等級認定の流れは以下の通りです。
(1) 主治医が「症状固定」と判断する
症状固定とは、これ以上治療を続けても回復が見込めないと判断された状態のことです。
この時点で症状が残存していれば、それは「後遺障害」となります。
(2) 主治医に「後遺障害診断書」を書いてもらう
後遺障害等級認定のために、「後遺障害診断書」を書いてもらいましょう。
これは後遺障害について詳細を記載するための特殊な様式の診断書で、病院が発行する一般的な「診断書」とは異なります。
(3) 後遺障害診断書を提出する
後遺障害診断書を、相手方の自賠責保険会社に提出します。
自賠責保険会社を通じて「損害保険料率算出機構」という機関が後遺障害の程度について判断、認定を行います。
数ヶ月ほどかかる場合もあるので、気長に待ちましょう。
届いた結果に納得いかなければ「異議申立て」をすることもできます。
4.むち打ちの後遺障害(12級)
(1) 12級と14級の違い
むち打ちの後遺障害が認められる前提として、「痛みやしびれなどの神経症状が一貫して残存している」という点がまず挙げられます。
この前提をクリアしていれば、後遺障害等級表の「12級13号」「14級9号」いずれかで認定される可能性が出てきます。
12級と14級を比べると、12級のほうが等級は上であり、受け取れる慰謝料や後遺障害逸失利益の金額もぐっと増えます。
ただし、12級13号が認められるには、上記の前提に加え、症状についての「他覚的所見」があることが必要になります。
他覚的所見とは、他人が見ても神経症状が残存していることがわかる資料のようなものです。
むち打ちの場合はMRIの画像・神経に異常が認められることがわかる検査結果(症状誘発テスト/筋萎縮テスト/腱反射テストなど)が他覚的所見とされることが多いです。
「痛みやしびれは一貫して続いているが、画像や検査では神経症状の原因が認められない」場合は「他覚的所見がない」とされ、14級9号もしくは非該当(後遺障害等級表のどれにも当てはまらない)になる可能性もあります。
(2) むち打ち12級の後遺障害慰謝料
12級で認定された場合の後遺障害慰謝料は以下の通りです。
- 自賠責基準の後遺障害慰謝料:93万円
- 弁護士基準の後遺障害慰謝料:290万円
- 労働能力喪失率:14%
ちなみに、14級の場合は以下の通りとなります。
- 自賠責基準の後遺障害慰謝料:32万円
- 弁護士基準の後遺障害慰謝料:110万円
- 労働能力喪失率:5%
他覚的所見が認められて12級となるだけで、受け取れる金額が大きく異なることがよくわかります。
5.むち打ちにおける適切な等級認定のポイント
(1) 受診のタイミング
適切な等級認定のため、まず以下の2点をおさえておきましょう。
- できるだけ早く受診する(事故と怪我の関連性を証明するため)
- 整形外科へ行く(専門的な検査をしてもらえる)
交通事故で受傷した場合は事故直後に受診するのが鉄則ですが、むち打ちは事故から時間が経ってから痛みやしびれなどが出てくることが多い怪我です。
事故直後に受診していない場合、首周辺に痛みを感じたらすぐ受診するようにしましょう。
(2) 継続的な受診
症状が続いている間は継続して受診し、治療を受けましょう。
そして、受診の都度、その時点で残っている症状(痛みやしびれなど)について主治医に報告しましょう。
(3) 「被害者請求」で申請する
後遺障害等級認定の申請は、相手方の任意保険会社が代理で行う「事前認定」ではなく、被害者自身で資料集めを行う「被害者請求」という方法をおすすめします。
特にむち打ちの後遺障害等級認定に関しては、診断書に記載する表現や添付する資料によって結果が大きく左右されます。
被害者請求の場合、専門家からのアドバイスなどを受けつつ入念に準備をすることができるため、より適切な等級で認定される可能性が高まることでしょう。
6.越谷周辺でのむち打ちの後遺障害等級認定は弁護士におまかせ
このように、後遺障害等級認定は「被害者請求」という方法がおすすめなのですが、手続に不慣れな人が後遺障害を抱えながら作業するのはやはり負担が大きいものです。
「納得できる形で後遺障害等級認定の申請を行い、適切な等級で認定を受けたい」そうお考えの方は、ぜひ一度弁護士に相談してみましょう。
後遺障害等級認定においては、適切な等級に認定されるよう、受けるべき検査や診断書に記載すべき項目などについてのアドバイスが可能です。
また、認定後の慰謝料交渉において、弁護士が介入することで「弁護士基準」という高い基準で交渉できるようになり、相手提示額からの大幅な増額が期待できます。
越谷市、春日部市、埼玉東部地域、東武スカイツリーライン沿線にお住まい、お勤めの方で、「むちうちの後遺障害等級認定」でお困りの方はぜひ、泉総合法律事務所越谷支店の弁護士に一度ご相談ください。
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