交通事故の弁護士費用特約の活用方法
交通事故で弁護士に依頼したときの弁護士費用を任意保険会社が支払ってくれる「弁護士費用特約」は、現在、様々な保険に付いていて、多様なサービスが拡充されているため、非常に便利となっています。
しかも、利用しても保険料は上がりませんから、デメリットはほとんどありません。
しかし、利用の際に注意しなければ、最大限のメリットを受けられないことがあります。
このコラムでは、交通事故に関して弁護士費用特約を利用する際の注意点を説明します。
このコラムの目次
1.弁護士費用特約を利用する際の確認
皆さん既にご存知かと思いますが、弁護士費用特約とは、交通事故などで弁護士への依頼が必要な方に対し、その方が加入している任意保険会社が限度額まで弁護士費用を負担してくれるという特約です。
この弁護士費用特約は、最近、世間でも広く認知されるようになり、人気が広がるにつれて、保険業界で弁護士費用特約の内容をどれだけ充実させるか競争が生じています。
その結果、被害者の方はもちろん、保険会社の代理店の担当者でも、弁護士費用特約を利用できるかどうかを確認することが難しいケースがあります。
(1) 確認する事項
まず、どの保険に弁護士費用特約が付いているか・誰の保険に弁護士費用特約が付いているか、などを確認する必要があります。
①どの保険に弁護士費用特約が付いているか
弁護士費用特約は、2019年現在、任意保険のほとんどで積極的に採用されるようになっています。そのため、気付かないうちに付加されていることもあります。
また、自動車保険だけでなく自転車保険、傷害保険や火災保険、クレジットカードにサービスとして追加されている損害保険にも付いていることがあります。
自動車保険だけでなく、他の保険の内容も確認しましょう。
複数の保険で弁護士費用特約に加入していた場合、のちに説明する通り、保険会社によって、支払ってくれる弁護士費用の上限額や、弁護士費用の計算方法、支払われる弁護士費用の項目も変わる可能性があることにも注意してください。
②誰の保険に弁護士費用特約が付いているか
弁護士費用特約を利用できる人は、保険加入者だけとは限りません。
ご家族、特にお子様の場合は、別居されていらっしゃる場合でも、未婚独身であれば、学生であるか社会人であるかに関わらず、ご両親が加入している弁護士費用特約を利用できる場合があります。
ですから、被害者の方自らが加入している上記の様々な保険のみならず、ご家族、特にご両親が加入されていらっしゃる保険の内容も確認しましょう。
③当該事故は利用の対象となっているか
「通勤中や仕事中の事故でも利用できるか」「歩行者であった場合は利用できるか」「同乗者も利用できるか」「加害者になってしまった事故でも利用できるか」などといった、特約が利用できる事故といえるかどうかも重要です。
通勤中や仕事中に遭ってしまった事故については、保険会社によっては、弁護士費用特約は利用できないとしていることがあるようです。
また、飲酒運転のように、著しい注意義務違反がある場合には、利用できないとされていることでしょう。
(2) 各確認の方法
まずは、弁護士費用特約が付いている可能性のある保険の資料をできる限り集めましょう。
そして、保険会社の代理店に資料を持参、または、電話で確認をしましょう。
もっとも、代理店や電話先の担当者でも、完全には契約内容を把握しきれず、その場ではすぐに正確な返答をすることができないケースがあるようです。
そのため、ごくまれにではありますが、弁護士費用特約を利用できるにもかかわらず、利用できないと言われてしまうことがあるといいます。
そんなときは、弁護士費用特約の利用をあきらめずに、保険会社のコールセンターに連絡をしましょう。
なお、弁護士費用特約を利用するには、事前に保険会社へ連絡をして、承認を得ることが条件とされていることがほとんどです。
(3) 契約できる弁護士
弁護士費用特約を利用できる弁護士は、保険会社から紹介された弁護士に限りません。
保険会社が日弁連と協定を結んでいる場合には、被害者の方が住んでいる地域をカバーしている弁護士会から、弁護士を紹介してもらえます。
しかし、この制度は、弁護士会内部で登録されている弁護士に登録名簿順に機械的に割り振るものです。被害者の方の個別具体的な事情が考慮されるものではありません。
そこで、この制度を利用せずに、自分で弁護士を探して依頼することもできます。
その弁護士についても、弁護士費用特約を利用することは可能です。
※なお、保険会社が日弁連と協定を結んでいない場合には、弁護士会から弁護士の照会を受けることはできません。
2.自己負担額について
弁護士費用特約により支払われる弁護士費用の相場は、2019年現在、300万円まで(法律相談費用はこれとは別に年10万円まで)となっています。
しかし、弁護士費用が上限金額に届いていない場合でも、自己負担が生じる場合がありますので注意が必要です。
(1) 実費
保険会社と意見が食い違ってしまい支払い拒否が生じる恐れのあるものとして、「実費」があります。
実費とは、弁護士が依頼された法律事件を処理するうえで必要となる費用で、これも特約による補償内容に含まれます。
代表例としては、現場調査や裁判所出頭に際しての交通費や、郵便物の切手代、振込手数料が挙げられます。
弁護士が仕事をする上で、どこまでが経費、そして実費と認められるかは、あいまいなところがあります。
たとえば、怪我や症状の内容を証明するために、専門的な企業に依頼して、病院の検査結果や画像データについて、医学的な専門知識に基づいて分析してもらった「鑑定」意見を作成してもらった場合を考えてみましょう。
(このような鑑定により、損害賠償金が増額されることは珍しくありません。)
この鑑定にかかった費用について、保険会社は、「鑑定費用は実費に含まれないから支払わない」と主張することがあります。
保険会社がこの主張を押し通してしまうと、鑑定費用については、被害者の方が負担することになります。
交通事故の経験が豊富な弁護士であれば、「鑑定は後遺症についての証拠になり、損害賠償金を請求するために必要な費用だから、実費に含まれる」というように、単に保険会社の言いなりになってすぐに依頼をされた被害者の方に自己負担を要求するのではなく、保険会社の担当者と交渉することができることがあります。
保険会社が首を縦に振るとは限りませんが、交渉はプロに任せるに限ります。
弁護士費用の一部の支払いを拒否されてしまったら、弁護士に相談をしてみましょう。
(2) 支払いの上限を超えそうな場合
また、弁護士費用が300万円を超えると、自己負担が発生することは避けられないでしょう。
もっとも、弁護士費用の自己負担が発生するとしても、弁護士に依頼をすべき場合がほとんどです。
弁護士費用が300万円を超える場合、被害者の方は、損害賠償金が1000万円を大きく超える重大な後遺症が残る大怪我をされていることになります。
弁護士に依頼すれば、たいていの場合は、自己負担分をはるかに超える増額が期待できるでしょう。
3.弁護士費用特約の利用は弁護士に相談を
弁護士費用特約は非常に便利なサービスです。
しかし、(極端な金額を突然要求されることはないにしろ)一切支払いは不要だと思っていたのに、事前確認などが不十分だったために、自己負担が生じるおそれがないわけではありません。
まずは、交通事故事件の経験が豊富な弁護士に相談しましょう。
複雑な保険の契約約款に関する助言や、保険会社との支払交渉についても、出来る限り早くから助言を受けておけば、トラブルを最小限に抑えられる可能性が高くなります。
泉総合法律事務所では、これまでに多数の交通事故被害のご相談をお受けしており、解決実績も豊富にございます。
弁護士費用特約の利用をご希望されている、交通事故の被害者の皆様のご相談をお待ちしております。
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