交通事故

椎間板ヘルニアになった場合の後遺障害等級と請求できる損害賠償金額

椎間板ヘルニアになった場合の後遺障害等級と請求できる損害賠償金額

交通事故で大きな衝撃を受けてしまった場合に、「椎間板ヘルニア」を発症することがあります。

ただ、事故の後椎間板ヘルニアと診断されたのに、交通事故の後遺障害として賠償金を請求することができなかったという人もいます。
なぜそのようなことが起こるのでしょうか。

この記事では、交通事故での椎間板ヘルニアによる慰謝料のポイントについて、解説していきます。

1.椎間板ヘルニアとは

背骨の骨と骨の間には、椎間板というものがあります。背骨をつなぎ、クッションの役割をしているものです。その一部が出てきて神経を圧迫している状態を、椎間板ヘルニアといいます。

発症する部位は、頸から腰まで考えられますが、頸や腰が多いと言われています。

(1) 椎間板ヘルニアの症状

飛び出した椎間板の一部が神経を圧迫することで、腰や手足などに、痛みやしびれなどが起こります。

(2) 交通事故で発症する椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアの原因は様々で、加齢による変性などもその1つですが、交通事故による強い衝撃によって、椎間板が圧迫を受けたことが原因になることもあります。
交通事故で発症しやすいのは、「頚椎椎間板ヘルニア」と「腰椎椎間板ヘルニア」だと言われています。

2.椎間板ヘルニアによる後遺障害等級認定

(1) 後遺障害等級とは

交通事故でけがをすると治療を受けることになりますが、痛みなどの症状が残っているにもかかわらず「治療を続けてもこれ以上良くならないという状態」になってしまうことがあります。

そのような時点(「症状固定」といいます)で残ってしまった症状が、交通事故によって生じた賠償されるべき損害として認定されると、後遺障害に対する慰謝料や逸失利益を請求することができます。この認定のことを、後遺障害等級認定といいます。

後遺障害は、症状の程度によって、14級から1級までの14段階の等級に分けられていて、慰謝料などの金額は、等級が上がるほど大きくなります。

(2) 椎間板ヘルニアで該当し得る後遺障害等級

椎間板ヘルニアで該当し得る等級は、

①12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」
②14級9号の「局部に神経症状を残すもの」

です。

①12級13号が認定される場合

12級13号が認定されるためには、被害者が訴える症状を、MRIなどの画像診断結果、神経学的検査結果などの他覚所見によって医学的に証明する(画像所見、神経学的所見に医学的な整合性がある)ことができなければなりません。

また、その原因が交通事故であると認められること(症状と交通事故との間に因果関係が認められること)が必要です。

②14級9号が認定される場合

一般的に、14級9号が認定されるためには、被害者の訴える症状が医学的に説明可能であることが必要だといわれます。

明確な画像所見はなくても、症状に一貫性、連続性がある場合などに、認定される可能性があります。

3.ヘルニアの場合の慰謝料相場

(1) 慰謝料の3つの基準

慰謝料金額には、3つの基準があります。①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士(裁判)基準です。

自賠責基準とは、自賠責保険制度において、国が定めた支払い基準です。自賠責保険は、被害者に必要最低限の損害賠償を行うためのものなので、基準の金額は、低く設定されていいます。

自賠責保険金ではまかないきれない損害をカバーするのが任意保険です。
任意保険基準とは、それぞれの任意保険会社が、示談金を提示する際に用いるといわれている基準のことです。任意保険基準は、各保険会社が独自に設定しているものなので、はっきりした金額は不明です。

示談金を支払う立場にある任意保険会社が自ら設定している基準ですので、弁護士基準よりはかなり低い基準になっています。

弁護士基準とは、弁護士が相手方に損害賠償請求を行う場合に用いる基準のことをいいます。実務においては、一般的に、日弁連交通事故センターが発行する「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(「赤い本(赤本)」と呼ばれています)という書籍にまとめられたものが使われています。

また、この基準は、過去の裁判例を踏まえて作成されていますので、訴訟になった場合には、裁判所もこの基準を目安にすることが多いため、「裁判基準」とも呼ばれています。

弁護士基準が、3つの基準の中で最も高額になっています。

(2) 通院慰謝料

通院慰謝料とは、交通事故で負ったけがの治療のために通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。

例えば、ヘルニアで6ヵ月間、60日通院した場合の通院慰謝料は、一般的には、次のようになります。

自賠責基準:50万4000円
弁護士基準:116万円

(3) 後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、交通事故が原因で後遺症が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。

先程のように、椎間板ヘルニアの場合、12級または14級に認定される可能性があります。

12級の場合の後遺障害慰謝料
自賠責基準:93万円
弁護士基準:290万円

14級の場合の後遺障害慰謝料
自賠責基準:32万円
弁護士基準:110万円

4.交通事故でヘルニアになった場合の治療

(1) 医師に症状をきちんと伝える

椎間板ヘルニアは、交通事故でけがをした直後ではなく、治療進んだ後で診断されるケースがあります。

しかし、交通事故からと診断日までの期間が大きく空いてしまうと、交通事故と椎間板ヘルニアとの間の因果関係が否定されてしまうおそれがあります。そうすると、交通事故の後遺障害と認めてもらえず、等級を獲得できません。

このようなことをできる限り避けるためには、受診したとき、少しの症状でもすべてきちんと医師に伝えてカルテに記載してもらっておくことが大切です。

そして、その訴えを続けることも重要です。途中で症状がなくなったと思われないためです。

(2) 定期的に通院を続ける

通院に間があいてしまったり、頻度が少なすぎたりすると、それほどたいした症状はなかったとみられてしまうことがあります。そうすると、後遺障害等級認定を受けられない可能性があります。

また、事故後すぐに受診していないことや、通院が中断していることが、因果関係が否定される要因となることもあります。

仕事や家事などで忙しく通院を継続することは簡単ではないと思いますが、後々の得られる賠償金に大きな差が出てくることもありますので、できるだけ、定期的な通院を継続(最低週1~2回)することを意識しましょう。

(3) 十分な検査を受ける

後遺障害等級を認定してもらうためには、検査の結果が不可欠です。MRI検査や、各種の神経学的検査を、必要な時期にきちんと行っておくことが重要になります。

どのような検査をどのような時期に行うべきかは、弁護士に相談して確認しましょう。

5.示談交渉のポイント

椎間板ヘルニアの後遺症については、因果関係が争われることがよくあります。

椎間板ヘルニアは、スポーツや年を取ることによって起こることもあるため、相手方の任意保険会社から、「被害者が訴える症状の原因が今回の交通事故とは認められない。」と言われてしまうことがあるのです。

また、因果関係は否定されないとしても、素因減額の主張がなされることがとても多いです。

素因減額とは、被害者が事故の前から有していた既往症などの「素因」が、損害を拡大しまったといえるような場合に、損害賠償額を減額することをいいます。椎間板ヘルニアの場合、事故の前から椎間板ヘルニアが発症していたとして減額すべきだという主張がなされるのです。

しかし、必ずしも保険会社の主張が正当であるとは限りません。

ですから、保険会社からの示談金の提示を鵜呑みにするのではなく、事故の前に椎間板ヘルニアの診断を受けたことがないことや、椎間板ヘルニアの症状はなかったことなどをきちんと主張すべきです。

6.まとめ

以上のように、交通事故で椎間板ヘルニアを発症したことを原因として慰謝料などを請求するためには、押さえておかなければなければならないポイントがいくつもあります。

しかし、きちんとポイント押さえて後遺障害等級認定をクリアし、かつ、保険会社との示談交渉を有利に進めるためには、専門的な知識や経験が必要になってきます。

交通事故で後遺症を負ってしまった場合には、まず弁護士に相談することをおすすめします。越谷市、春日部市、埼玉東部地域、東武スカイツリーライン沿線にお住まい、お勤めの方は、泉総合法律事務所越谷支店の弁護士に是非一度ご相談ください。

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