子どもが少年事件を起こしてしまった!付添人は必要?
少年事件では、通常の刑事事件とは異なり、少年審判に向けて弁護人を選任するものではありません。
その代わりに、付添人をつけることができます。
しかし、付添人といっても一体どんな役割があり、何をしてくれるのかよく分からないでしょう。
親が選んであげたほうが良いのか、それとも国選付添人で良いのか迷ってしまう方も多いと思います。
そこで今回は、少年事件における付添人の概要、役割、種類、誰が付添人になれるのか、という基本的な内容から、私選付添人をつけるメリットまで、わかりやすくご説明します。
このコラムの目次
1.少年事件における「付添人」とは
まずは、付添人の仕事の内容や役割、種類など基本的なことを理解していきましょう。
(1) 少年法の目的と付添人
犯罪を犯した成人が刑事処罰に科せられるのは、法を犯したことに対し罰を与えるという目的や、国民の人権が不当に侵害されることを予防するという目的があります。
これに対し、少年事件の場合は、大人の刑事事件のように処罰を与えるという目的はありません。あくまで「少年の健全な育成」が目的です。
少年は、教育によって、2度と犯罪や非行に走らない、健全な社会人に成長する可能性を秘めています。そのための手助けをすることが少年法の目的です。
ですから、少年審判を受けるに際して、原則として弁護人は付かないのです。
もっとも、事件の内容を正しく認定してもらうために、事実関係を調査し、捜査に誤りがあれば正さなくてはなりません。また少年に言い分があれば、これを審判官(裁判官)に理解してもらえるように伝える必要があります。
さらには、少年に無関心な両親の目を少年に向けさせる、就職先を探す、復職を受け入れてもらうなど、少年の健全育成のために必要な環境を整え、家庭裁判所の活動に協力する大人も必要です。
これらの役割をする大人が「付添人」なのです。
(2) 付添人の役割
付添人は、事実関係や事件の内容、証拠を確認し、家庭裁判所に対し正しい事実認定が行われるよう主張を行っていきます。この役割は、成人の刑事事件における弁護人的な性格があります。
少年の場合は、身体だけでなく精神も未成熟なため、捜査官に言われるがまま自白をしてしまったり、嘘をついてしまったりすることがあります。
場合によっては、冤罪の可能性もあるため、付添人はこのような被害から少年を守るという役割もあるのです。
これ以外にも、少年が立ち直るための生活環境を整備することも重要な役割です。
被害者や被害者家族に対し謝罪の機会を設け、被害弁償などを行う活動はもちろんですが、少年事件ではそれにとどまりません。
例えば、少年事件の記録は、成人の刑事事件と同じく被疑事実の捜査資料を中心とした記録(これを「法律記録」といいます)と、成人の刑事事件にはない少年を取り巻く環境などに関する記録(これを「社会記録」といいます)があります。
この「社会記録」は、少年の保護育成の必要性、そのための方策を検討するための様々な資料で構成されています。
少年鑑別所での調査結果、家庭裁判所調査官の調査結果、学校、病院、福祉施設への問い合わせと回答など、必ずしも少年の犯罪行為、非行行為に直接関係しない資料も含まれます。それは、少年審判の目的が、少年の健全な育成にあるからです。
付添人は、法律記録だけでなく、社会記録も読むことができます。
それは、付添人が成人の刑事事件の弁護人とは異なり、少年の保護育成の協力者だからであり、審判官、家裁調査官らと協力して、何が最善の方策かを考え、実現する役割が期待されているからです。
このように、付添人は刑事事件の弁護人とは異なる制度ですが、少年の健全な育成を支える重要な役割を担っています。
(3) 付添人の種類|国選と私選
付添人は少年にとって更生を支える重要な役割を持つ人ですが、付添人にも種類があります。
それは、国選付添人と私選付添人です。
国選付添人は少年法に定められた状況がある場合のみ、選任されます。
国選付添人は、①法律で定められた要件がある場合には必ず付添人が選任される必要的国選付添人と、②選任されるかどうかが裁判所の裁量に委ねられる裁量的国選付添人に分かれます。
- 必要的国選付添人について
検察官関与決定がなされた場合(少年法22条の3第1項)又は被害者等による少年審判の傍聴を許そうとする場合(少年法22条の5第2項)に、弁護士である付添人がついていなければ、国選付添人が選任されます。 - 裁量的国選付添人について
裁量的国選付添人の対象となるのは、①犯罪少年(罪を犯した少年)又は触法少年(14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年)が、②死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪に該当する非行に及び、③観護措置が取られ、④弁護士の付添人がいない場合において、⑤事案の内容、保護者の有無、その他の事情を考慮して、審判手続に弁護士の付添人の関与が必要と裁判所が判断した場合です。
これらの要件が満たされる場合にも、国選付添人がつけられることとなります。
私選付添人は、少年あるいはその保護者が選ぶ付添人のことです。少年が選ぶことは難しいため、保護者が選ぶのが一般的です。
少年が拒否した場合でも、保護者において選任は可能です。
2.付添人の職務内容
先にお伝えしたように、付添人は少年の審判を適正に進め、健全な育成を支えるのがその役割です。
少年事件の中ではさまざまな活動を行っていくことになりますが、主要なものだけでも、具体的に以下のような内容をすることができます(以下の活動には逆送事件のものも含みます)。
- 勾留に対する異議申し立て、準抗告
- 審判に出席すること
- 少年鑑別所に収容中の少年と立会人なしで面会すること
- 証拠調べでの立会権
- 証人や鑑定人へ尋問すること
- 審判での意見陳述の権利
- 記録及び証拠物の閲覧
- 証拠調べの申出をする権利
- 保護処分決定に対する抗告権
付添人が審判やその前段階においてできることは、見てわかる通り刑事事件における弁護人の役割と似ています。
刑事事件において弁護人は被告人の法的主張を代弁する役割がありますが、少年事件における付添人も異議を申し立てたり、証拠を閲覧して反論したりするなど、活動自体は弁護活動と類似性があります。
このように、少年の付添人には、少年の周囲の環境を整えるだけではなく審判においても重要な役割を果たします。
3.付添人になれる人
では、付添人になるには資格などが必要なのでしょうか。
実は、付添人に特別な資格などは必要ありません。私選弁護人の場合は、ほとんどのケースで保護者が選ぶことになりますが、保護者自身も付添人となることができます。
保護者だけではなく、親戚や通っている学校の先生なども付添人になることが可能です。
保護者や少年をよく知る人なら、少年のそばについてケアをしてあげられることや少年の将来を考えて更生のための活動ができることから、資格制限などがなく認められています。
もっとも、先にご説明したように、付添人は少年の弁護人のような役割を果たさなければいけません。法的主張を行うためには、法律や少年犯罪における知識、経験なども必要となってきます。
そのため、弁護士でない人が付添人になる場合は、裁判所の許可が必要です。
実際上は、ほとんどは弁護士が付添人となっています。前述した通りの法律知識や経験もあることから、保護者も安心して任せられるという点は大きいでしょう。
付添人がついた少年事件の98.8%で弁護士が付添人を務めているという統計もあります(※)。
このように、付添人は誰でもなることができますが、法的主張を行うことなどを考えると、弁護士を選任したほうがいいでしょう。
※2016年度、一般保護少年事件の数値( 最高裁判所事務総局家庭局・家庭裁判所事件の概況2少年事件・法曹時報 70 巻 1 号)
4.私選付添人を選任するメリット
最後に、私選付添人を選ぶメリットをご説明します。
(1) 付添人を保護者が選ぶことができる
国選付添人を選任できる要件がそろっている場合、裁判所が選任した弁護人が付添人となります。
国選の場合は、原則的には費用がかからないというメリットがあるためそのまま国選の付添人に任せるという方も多いです。
もっとも、国選の場合には保護者が付添人を選ぶことができないことがデメリットといえるでしょう。
この点、私選の場合は自分で付添人を選ぶことができるのがメリットといえます。
実際、逮捕された段階、あるいは勾留された段階で弁護士をつけ、そのまま最後の審判までお願いするというケースも多々あります。
(2) 信頼できる付添人に任せられる
保護者の中には、「国選って大丈夫なの?」と不安になる方もいらっしゃいます。
実際のところ、国選付添人も私選付添人も同じ弁護士ですので、国選付添人であることをもって、私選付添人に能力的に劣っているというとはいえないでしょう。情熱をもって少年の更生を支えてくれる国選付添人もたくさんいらっしゃいますので、この点は一般的にはご心配いただく必要はないと思います。
もっとも、実際に国選付添人話してみて不安を感じたという方もいらっしゃるでしょう。
「少年との相性が悪い」、「保護者の意見をしっかり聞いてくれない」、「少年事件の経験が浅い」 など、さまざまな不満が考えられます。
少年事件の処分結果は少年の一生を左右する事柄のため、信頼できる方に付添人になってもらうべきです。
したがって、保護者自身が国選付添人を信頼できないと感じるなら、私選弁護人を選んだ方がいいでしょう。
5.少年事件の付添人は泉総合法律事務所にご相談を
子どもが少年事件を起こしてしまったとき、当然、親御さんとしてはとても心配になると思います。
どう対応してよいかわからず、右往左往してしまう方も多いでしょう。
少年事件がどのように進んでいくのかわからない、審判の結果はどのようなものになるのかなど、専門家に聞きたいことはたくさんあると思います。
泉総合法律事務所の弁護士は、刑事事件・少年事件の実績も多く、少年の立ち直りに向けて最大限尽力してきました。
不安や疑問をお持ちの場合は、ぜひ泉総合法律事務所にご相談ください。
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