刑事事件

暴行罪の慰謝料はどれくらいの額になる?

暴行罪で警察に捕まった、逮捕されたという場合、穏便に解決する一番の近道は、示談を成立させることです。

示談は、相手との和解の性質を持ち、当事者間での解決を計るものです。示談の内容としては謝罪や処罰を求めない旨の被害者の意思などが示談書の内容としてまとめられますが、必ず必要となってくるのが慰謝料です。

暴行事件の場合は、傷害罪のケースよりは安く済むことが多いですが、暴行の内容によっては金額が大きくなってしまうこともあります。

そこで今回は、暴行罪の刑罰、傷害罪との違い、逮捕後の流れと示談の重要性、示談金の相場までわかりやすくご説明いたします。

1.暴行罪について

(1) 暴行罪の刑罰

二年以下の懲役、三十万円以下の罰金、拘留もしくは科料

刑法では、人に暴行を加える行為を厳しく処罰する旨を定めています。
具体的には、刑法208条において以下の通りに定めています。

“暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。”

暴行と聞くと、「殴る行為、蹴る行為」をイメージされる方が多いのではないでしょうか?

確かに、人を殴ったり蹴ったりする行為は暴行罪の典型的な例となります。
しかし、女性の髪の毛を切るなども、痛みは生じませんが「暴行」の1つと考えられています。

これ以外にも、身体に対する直接的な侵害がないケース、例えば「包丁を振り回す」なども暴行罪として処理されます。

また、複数人で被害者に対し殴る蹴るの暴行を加えた場合には、刑法以外の法律も適用されます。

「暴力行為等処罰に関する法律」は、複数名による集団暴行や器物破損などを処罰する法律です。これに当てはまる行為の場合、暴行罪に当たる行為でも重く処罰されます。

当該法律では“三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス”と規定されており、悪質な集団暴行の場合は法定刑の上限が、2年以下の懲役から3年以下の懲役に引き上げられてしまいます。

このように、暴行罪も、悪質な集団暴行の場合は重く処罰されることが規定されています。

(2) 傷害罪との違い

暴行罪とよく似た刑罰に「傷害罪」があります。

刑法204条では「人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定しています。

「人の身体を傷害した」場合に罰せられると書かれている通り、人に暴行を加えた際に怪我をさせてしまった場合などに成立します。

もっとも、ここにいう「傷害」とは人の生理的機能に障害を与える行為を指します。怪我をさせる行為の場合、軽微な怪我は含まれないとされているので、医者に行くほどの怪我かどうかは、ひとつの目安にはなります。

傷害罪は、暴行罪に当たる行為において重い結果が発生してしまった場合も想定しています。
そのため、怪我をさせるつもりはなかったという場合でも、暴行罪ではなく、傷害罪が成立してしまうのです。

また、暴行罪との間には法定刑の違いもあります。
暴行罪は2年以下の懲役が上限だったのに対し、傷害罪では15年以下の懲役となり、かなり重い罪となっています。

また、PTSDなどの精神障害を引き起こした場合に傷害罪として認定したケースもあります。
これ以外にも、殴る蹴るの直接的な暴行を行わなくとも、エイズに故意で感染させた場合なども傷害罪となります。

このように、暴行罪と傷害罪には法定刑や行為の結果の違いだけでなく、行為態様の違いもあります。

2.暴行罪で逮捕後の刑事手続の流れ

(1) 逮捕

逮捕には、主に二つのケースがあります。

1つめは、現行犯逮捕されるケースです。周囲の通報などによって警察官が現場に向かい犯行中または犯行直後に逮捕します。
2つ目は、後日逮捕されるケースです。この場合は、証拠を集めた上で裁判所から令状をとって逮捕する通常逮捕の方法がとられることがほとんどです。

いつ頃逮捕が行われるのかは捜査状況にも左右されるためわかりません。
しかし、軽微事案では任意で警察署に呼ばれるなどの方法がとられることが多く、逮捕状が請求されるのは被害者の怪我が重い場合や、証拠隠滅・逃走の可能性があると判断された場合などが一般的です。

(2) 警察署にて取り調べ→検察→勾留請求

現行犯逮捕、後日逮捕、どちらのケースであってもその後は基本的に同じ流れになっています。

警察署で取り調べが行われ、逮捕から48時間以内に検察庁に身柄が送致されます。

検察でも改めて事情聴取が行われ、24時間以内に勾留請求を行うかが決定します。

(3) 勾留期間(10〜20日)

仮に勾留が決まった場合には、原則として10日程度留置施設から出ることはできません。場合によっては、さらに最大で10日間勾留が延長されることもあります。

通常は、勾留中に起訴するかどうかの判断が検察で行われ、起訴が決定したら早くて1ヶ月半程度で第一回目の裁判となります。

(4) 裁判〜判決

有罪となった場合は、判決で、執行猶予判決、罰金刑、懲役刑などが言い渡されます。

刑事事件では、社会生活への影響を少しでも軽減するためにも、逮捕後できるだけ早い釈放を目指すべきです。

弁護士がいれば、早期の釈放を目指した弁護活動を行います。

3.暴行罪における示談

(1) 示談の重要性

暴行罪においては、示談が非常に重要です。理由は以下の通りです。

  • 早期に釈放してもらえる可能性が高まる
  • 不起訴の可能性が高まる
  • 前科がつかなくなる可能性が高まる
  • 量刑に大きく影響する

暴行事件の場合、怪我もない軽微事件として扱われれば、不起訴になることもありますが、暴行の態様が悪質であった場合は、起訴されたうえで懲役刑となる可能性もあります。

これらを防ぐために、示談の成否が重要となるのです。

示談が成立していれば、当事者間の問題が解決していると判断されるため、勾留もなく早く釈放される可能性が高くなります。また、示談により不起訴にしてもらえる可能性も高いです。

不起訴になれば有罪とはならないため、前科もつきません。
仮に起訴されても、判決までに示談が成立すれば量刑にも大きく影響し、罰金刑で済む可能性や執行猶予がつく可能性も高まります。

このように、暴行罪において示談は非常に重要です。事件による不利益を最小化するためにも、早期示談成立を目指しましょう。

(2) 示談金の相場

示談を行うためには、示談金が必要となります。

暴行罪は、傷害罪のように重い怪我や後遺障害などが想定できないため、傷害罪よりは一般的に示談金額は低くなる傾向にあります。相場としては、10-30万円程度といわれています。

もっとも、行為態様が悪質であった場合や、加害者の経済力が高い場合は、高い金額になることもあります。

示談金に関しては、金額を決める上でのルールなどは存在しません。そのため、当事者が合意した金額で示談が成立することになります。

示談金は慰謝料の性質を持つため、被害者がどれほどの精神的苦痛を受けたかによっても変わります。
最終的には、交渉によって金額が定まるといえるでしょう。

(3) 示談金決定の際の注意点

示談金決定の際は慎重に交渉していく必要があります。

というのも、場合によっては被害者が金額に納得せず、なかなか示談が成立しないケースもあるためです。
当事者同士で示談を行う場合は、加害者は「早く終わらせたい」、被害者は「傷ついた分できるだけ慰謝料が欲しい」と考え、金額で折り合いがつかなくなってしまうのです。

このとき、加害者は必要以上の金額を支払ってしまうケースもありますが、揉めそうな場合は弁護士を挟むのが適切です。

暴行事件の場合は、本来それほど高額な金額にはなりません。暴行が毎日のように執拗に繰り返されていたケースなどの悪質なケースでは金額が上がることも考えられますが、基本的には怪我のない事件という性質上大きく膨れ上がることは珍しいといえます。

また、被害者にも落ち度があるケースもあり、その場合には示談金の減額材料ともなりえるため、金額は交渉次第といえます。

以上のように、被害者との間で示談に関して揉め事が発生しそうな場合、相場より金額が大きく引き上げられそうな場合は、すぐに弁護士に相談すべきです。

4.暴行罪の示談は泉総合法律事務所にご相談を

暴行罪の示談は、当事者間では難しいことがよくあります。特に事件に関して両者に言い分がある場合は、冷静に話し合いが進められません。

また、加害行為が悪質であった場合は、被害者が示談を拒否することも考えられます。

示談がうまく進みそうにない場合は、弁護士に交渉をお任せください。
泉総合法律事務所では、刑事事件に精通した弁護士が迅速に対応いたします。逮捕後はスピード勝負です。早期釈放、不起訴を目指しましょう。

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