刑事事件

酔った勢いで器物損壊罪|覚えていなくても逮捕される?

酒に酔うと、勢いで他人の物や公共物を壊してしまうケースがあります。
お店の看板や人形、道路上のものを傷つけたり、壁に落書きしてしまったりするケースもあるでしょう。

そんなとき、壊したものを弁償するだけでは済まず「器物損壊罪」という犯罪が成立する可能性があるので注意が必要です。

今回は、酔った勢いで他人の物や公共物を壊したとき、わざとではない場合や覚えていない場合でも「器物損壊罪」が成立するのか、解説します。

1.器物損壊罪の要件

器物損壊罪とは「他人の物を壊したとき」に成立する犯罪です。他人の動物を傷つけたときにも同じく成立します。

刑法261条
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する

(1) 他人の物

器物損壊罪は、「他人の物」を壊したときに成立します。自分の物を壊しても器物損壊罪にはなりません。
ただし、他人から預かっている物を壊したら器物損壊罪になります。

また「私有財産」か「公共財産」かを問いません。

そこで、道路上の施設や信号機、街路樹、道路表示、ガードレールなどの公共物を壊した場合にも器物損壊罪が成立する可能性があります。

(2) 損壊

「損壊」とは「物が本来持つ効用を失わせること」です。
物理的に壊すことだけではなく、たとえば食器に尿をかけることなども器物損壊罪になります。

酔った勢いで立ち小便などをして他人の物にふりかかった場合、それだけで器物損壊罪になる可能性があります。

【動物の傷害】
酔った勢いで、その辺にいる犬や猫を蹴ったりして傷つけるケースがあります。
そのようなとき、動物に「所有者」がいたら、所有者に対する器物損壊罪が成立します。
つまり、酔った勢いで他人のペットを傷つけると器物損壊罪になるということです。
所有者がいない動物の場合には成立しませんが、動物愛護法違反などが成立する可能性はあります。

(3) 故意がないと器物損壊罪にならない

器物損壊罪は「故意犯」です。故意がないと犯罪にならないので「わざと壊した」場合でない限り、器物損壊罪は成立しません。

例えば、足元がふらつき倒れてしまって、その時下敷きになった物を運悪く壊してしまった場合などには責任を問われません。

「酔った勢い」であっても「故意」があれば器物損壊罪が成立します。
後になって記憶が飛んで覚えていなくても、行為時にわざと物を壊したなら器物損壊罪になるということです。

【親告罪】
器物損壊罪は親告罪です。被害者による刑事告訴がないと処罰されることがありません。
酔った勢いで他人の物を壊しても、被害者と示談ができて告訴されなければ、処罰される可能性はなくなります。

2.泥酔で「心神喪失状態」になるのか

刑法は「心神喪失者の行為は処罰しない」と定めています(刑法39条1項)。

お酒を飲んで物を壊してしまった場合、「泥酔状態で心神喪失状態」だったと主張して刑を免れることはできないのでしょうか?

(1) 心神喪失にならないケースがほとんど

心神喪失状態とは、完全な前後不覚で自分では何事も認識できず、まったくもって是非の判断が不可能な状態を意味します。

このような人は「責任無能力者」といって、刑事責任を負う能力がないので刑罰を科せられることがないのです。

酒に酔った場合でも、本当にひどい泥酔状態になって、周囲のことも全くわからない前後不覚の状態であれば、「心神喪失状態」と認定される可能性があります。すると、他人の物を壊しても処罰されません。

ただ、多くのケースでは、ひどい酔い方をしていても周りは見えていますし、自分の行為の内容も最低限認識できているものです。

足元がふらついていても、怒鳴りながら周囲の物を殴ったり蹴ったりして傷つけたのであれば、「心神喪失状態」ではありませんし「故意」も認められます

(2) 記憶が飛んでも心神喪失にならない

そして、後に記憶が飛ぶほどの酔い方であったとしても、必ずしも心神喪失者にはなりません。

後に記憶がなくなっても、行為時(物を壊したとき)に事理弁識能力があれば刑事責任があると考えられるからです。
「覚えていない」と誤魔化していれば刑罰を免れるわけではありません。

幻覚や幻聴が見えて病的なほどの異常酩酊状態で前後不覚であれば、心神喪失状態となる可能性がありますが、ほとんどのケースでは心神喪失状態とは認められません。

3.器物損壊罪の刑罰

(1) 通常の器物損壊罪の刑罰

器物損壊罪の刑罰は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金または科料です。

(2) 過失がある場合

過失によって人の物を壊した場合、器物損壊罪は成立しませんが、「民事責任」が発生することに注意が必要です。
民事上の不法行為は「故意」だけではなく「過失」によって損害を発生させた場合にも成立するからです。

酔った勢いで転倒して物を壊したら、刑事罰は発生しなくとも、弁償金を払わなければなりません。

4.器物損壊で逮捕された後の流れ

器物損壊罪は、一般的に「軽い犯罪」と考えられていますが、被害者が刑事告訴をすれば逮捕される可能性もあります。

器物損壊罪で逮捕されたら、まずは48時間以内に検察官のもとへと送致されます。
その後24時間以内に「勾留」されるか釈放されます。

このとき、逃亡のおそれも証拠隠滅のおそれもないと判断されたら、勾留されずに釈放されて「在宅捜査」になる可能性もあります。

勾留された場合にはその後最大20日間、身柄拘束され続けます。

一方、在宅捜査になった場合には、そういった期間制限がないので1~数か月間捜査が続けられます。在宅捜査の場合、身柄拘束されないので普通に生活することが可能です。

勾留が満期になったときや在宅捜査で必要な捜査が終わったら、検察官が起訴するか不起訴にするか決定します。

器物損壊罪の場合、起訴されるとしても略式裁判となり、罰金刑や科料の刑で済むケースが多数です。

しかし、たとえ罰金刑や科料の刑であっても一生消えない前科がつきます。

5.謝罪と示談は必須

酔った勢いで物を壊し、器物損壊罪に問われたら、できる限り被害者から刑事告訴されないようにすべきです。

万一告訴されて逮捕された場合には、不起訴処分を獲得することが重要です。不起訴になったら前科はつけずに済むからです。

そのためには、被害者との示談を成立させましょう。

被害者が告訴する前に示談できたら、逮捕される可能性はなくなります。
逮捕されても、起訴前に告訴が取り下げられたら、早期に釈放してもらえて不起訴にしてもらえます。

器物損壊したら、被害者に早急に連絡を入れて謝罪し、弁償金を払って示談に応じてもらいましょう。

6.示談交渉は弁護士にご依頼ください

酔った勢いで他人の物を壊してしまったとき、本人が被害者に連絡を取ろうとしても、被害者が怖がったり立腹していたりして対応してもらえないケースが多々あります。

また、逮捕勾留によって身柄拘束を受けていたら、自分で示談を進めるのは不可能です。

そのようなときには、示談交渉を弁護士に任せましょう。弁護士が被害者へと丁寧に謝罪の連絡を入れて示談金の提示を行えば、被害者も応じやすいものです。

示談が成立したら弁護士が代理人として示談書を作成し、検察官に不起訴の申し入れをすることも可能です。
自分で対応するよりも示談が成立する可能性が大きく高まります。

酔った勢いで物を壊してしまい、被害者から訴えられるのを恐れているならば、放置せずにお早めに弁護士までご相談下さい。

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