競合会社に競り勝つため薄利多売した結果、資金難に陥り倒産した事例
債務整理方法 | 借金総額 |
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自己破産 | 1億3,000万円 ⇒ 0円 |
背景
本件会社はインターネット通信販売事業を中心に営んでいた会社です。この会社は、設立初年度から年商1億5,000万円を売り上げ、翌年には年商4億円を上げるなど、経営は順調であるように思えました。しかし、大手インターネットサイトの出店料や、代金決済の手数料負担が予想外に大きく、利益率は売上の1~2割ほどとなってしまいました。そのため、本件会社の資金繰りは、必ずしも安定したものではなかったのです。
また、商品の品切れを防ぐため、在庫商品を多数抱えていなければならない状態でした。品切れの状態が続いてしまうと、すぐに顧客が離れてしまうからです。さらに、これはインターネット通販の宿命ともいうべき問題ですが、顧客はクレジットカードでの購入がほとんどで、商品の売買から実際に代金が回収されるまでに時間がかかるという問題もありました。そのため、代金入金までの事業資金が中抜けした際の穴埋めとして、金融機関からの借入れをすることも少なくありませんでした。
そのような環境の中、大手通信販売業者がインターネット通信販売市場にも参入してきました。そのことにより、会社の経営が一気に厳しくなり、当該会社の社長であるAさんは、各金融機関に返済のリスケジュールのお願いをしたり、従業員の解雇なども行いました。しかし、膨れ上がった会社の債務を根本的に減らすことはできませんでした。そのため、今後の会社の経営に強い不安を感じたAさんは、当事務所へ債務整理のご相談にいらっしゃいました。
対応
本件会社は、商品の発送などを行うための事務所を借りていましたが、当事務所で依頼をお受けした段階では、賃料の未払いが発生しており、貸主から即時退去を求められていました。しかし、事務所の中には、まだリース機器や事務机など什器備品がそのまま置きっ放しになっていました。このような状況なので、退去するとしても少々、手間と時間を要する状態でした。そのため、弁護士の方から貸主に対して事情を説明したところ、何とか猶予期間をもらうことができ、その間にリース物件の返却や什器備品などの処分を行いました。
賃料の未払いがある状態での明渡しの後ろ倒しだったので、貸主がお怒りになるのも、もっともなのですが、什器備品を残したままでの退去の方が費用が高くついてしまいます。そのため、最終的には、貸主に譲歩してもらって、会社の什器備品を処分した上で、事務所の明渡しを行いました。
結果
本件では、数多くの債権者が存在しておりましたが、その中でも、破産手続において強硬な態度を取ってくる可能性があるのは、上記賃借事務所の貸主と商品を納入していた取引先業者でした。賃借事務所の貸主の方は、早い段階で弁護士が手続きの説明をし、本件会社の窮状についても伝えてあったので、特に異議等は出されずに済みました。
他方、取引先業者の方は、当事務所で債務整理を受任した直後から、色々と文句を言ってくるところも多かったのですが、社長であるAさんはギリギリまで頑張って会社の経営を続けてきたが、やむなく会社を閉じることとなった旨を文書で説明し、各社には何とか納得していただけました。その結果、破産申立後は、第1回目の債権者集会において異時廃止で無事に終結となりました。その結果、会社の負債額はゼロとなりました。